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自動車産業の広州進出と日本語人材



本年春先、中国また日本でも大きくマスコミに報道されたが、広州市南沙のトヨタ自動車エンジン部品工場(広州汽車との合併)の稼動が始まった。このトヨタ進出によって広州地区には自動車大手御三家が出お揃い、また他の大手メーカーこれに追随する働きがある。この地が日本の、即ち世界の一大自動車生産基地になる日も遠くはないかもしれない。今回は自動車産業からみた広州の人材状況について述べてみたい。

・人材誘致と通勤至便
南沙では、今でもいたるところで赤茶けた大地を忙しく土木機械が走り回り土地造成がおこなわれている。この土地造成と同時並行して工場建設も急ピッチで拡大しており、巨大な工場が広大な敷地に建設されるのを見ると、私が住み慣れた愛知県豊田市の同社工場を連想させ実に感慨深い。またこの工場と広州市内は数年先を目途に鉄道が開通し、市内から直接乗入が可能になるという。
他の大都市のそうであるが、中国では今も主要通勤手段はバスである。バスは天候あるいは渋滞事情によって所要時間が大きく異なり交通機関としてあてにならない。したがって中国のワーカーは、日本以上に勤務地に近い職住接近を好む傾向にある。仕事柄多数の中国人と接して来たが、せめて都心志向が強いのも通勤の問題が大きな理由にあると思われる。
その意味で、同社が工場前と広州市内を直結し通勤時間を保障する鉄道ルートを開設することは前代未聞ともいえ、人材を惹きつける意味でも下記的である。一方、すでに工場稼動している日系大手自動車メーカーのホンダは市内、また日産は新白雲空港を抱える花都区に工場構えているが、ここも空港と広州市内が鉄道で直接される予定で地理的環境はいずれも魅力的といえる。

・社員教育の重要性
手前味噌になるが、私の兄嫁は愛知県刈市にある大手自動車電装品メーカーD社で中国人に対して日本語教育を担当、日本語を教えている。以前は日系ブラジル人が日本語教育を受講する姿が多く見られたが、最近は中国人にとって変わった感がある。もちろんこれは中国進出にともなう結果である。日本語以外にも、日本企業で働く上で不可欠とも言えるマナー教育も熱心におこなわれている。馴れない日本語で “ホーレンソー”とつぶやく中国人も見受けられるそうだ。もちろんこれは"法連相”の略称で社内コミュニケーションの徹底化を図り、粗相がないようにするためである。私の経験から見ても、どちらかといえば中国では職場仲間同士や他のセクション間の情報伝達に、やや粗相が見られる傾向がある。文化、国情の違いと言っても、厳しい企業競争に打ち勝つためには是正すべきものは是正、改善しなければならない。日本の優れた品質生産管理の中でも、トヨタは特にかんばん方式など独自の生産管理方式を取り入れている。このグループ作業は作業手順も厳格性が要求され、習得には日本での実地教育が速効であり、一部選抜された中国時は磨きをかけるため日本に出向き、少数精鋭で詳述したマニュアルに基づき徹底的に鍛えられているようだ。
しかし中国含め多くの諸外国では仕事は自分の領域内に限定する傾向、すなわち他者の作業を手伝うといった習慣が希薄、また馴れていないため、現実にこのようなシステムの導入は各社いずれも苦心しているようだ。こういったグループ作業は作業員レベルの均質化と共同作業が強く求められるため、馴染むまでには時間を要すると思われる。

・人材獲得激化へ
自動車は電子・電気産業のEMSなどと違い、すそ野が広く熟練を要する分野も多く、一丁一端では人材が育たないという業種でもあり労働移動の激しい中国では頭を抱える問題だ。その意味で、中核となる日本語人材は前途したように自前で教育しているところもあるが、それも限りがある。やはり現地中国で教育を受けた人材に頼らざるを得ないが、単に日本語教育だけでなく今後は日本式職業訓練教育の導入も必要となろう。また電子、電気産業の多い広東省では電子、電気人材は育っているが、より熟練、経験を要する金属機械系エンジニアは希少で今後この分野の人材の争奪戦が激しくなると思われる。さらに、今後は下請企業が進出すると見られるが、日本人駐在社員との社内格差、その他厳格な人事規定に縛られることの少ない企業では上記のジレンマをクリアするため、現地採用で日本人を雇用することも今後増えると予想される。